・はじめに

ようやく自分の思い描いていた理想のコクピットが完成したので皆様にお披露目をしようと思います。

ところで私の完成させた理想のコクピットは、いわゆるSUSコクピットとしては物足りなさがそこはかとなく漂っています。
決して誰にとっても垂涎の的となるようなものではありません。
もっともそれは私がそうなるように設計したためなので、織り込み済みのことではあります。

なので私は最初にSUSコクピットを製作しようと思い立ったときに、完成しても紹介記事を書くことはしないだろうと思っていました。
先駆者の皆様が公開している美しく機能的なコクピットがたくさん見られるのだから、私の出る幕は無いだろうと考えていたのです。

しかし実際に本格的な設計・製作に取り掛かるとその考えは変わっていきました。
コクピット設計・製作の過程では漠然とした構想段階では思いもよらなかった問題への対処が求められることが何度もあり、その度に先駆者の皆様のコクピット記事を読み漁りながら、なんとか完成にまでこぎつけました。

そんな先駆者の皆様の力を借りなければ完成しなかったコクピットに収まっていると、その力を借りっぱなしでいることにむず痒さを感じるようになってきました。
できることなら何かお返しをしたい。
とは言っても、先駆者の方々に「こんなものを作りました」と報告をしてもあまり意味はありません。彼らは既に立派なコクピットを持っているのですから、私のコクピットをお見せしても何にもならないでしょう。

その代わりに、自分も製作したものを公開することでコミュニティ、ひいてはそこに所属する先駆者の皆様への恩返しとなればとの思いから、ここに紹介記事を執筆することにいたしました。

HP・ブログ・Twitterなどに素晴らしいコクピットを公開されている皆様。
皆様の公開されている情報がなければ私はこれを完成させることができませんでした。
貴重な情報やアイディアを惜しげもなく共有して頂いていることに厚く感謝申し上げます。

これからコクピットを作り上げようとお考えの皆様。
私のコクピットを参考にしろなどとは申しません。
ただ、公開されているSUSコクピットの多くがお金をたっぷりかけた贅沢なものの中、こうもミニマルなものを目指したものは珍しいかと思います。
一例としてご記憶にとどめて頂ければ幸いです。

 

・全景

(部屋があまりにも散らかっていて無加工ではそちらにしか目が行かないので周囲をボカしてあります)

コクピットの全体です。
コンセプトとしては「ツーリングカー・ラリーカー風ポジションの実現」と「不便だろうとできるだけ安く」です。

・フレーム

SUSのアルミフレームSF2で作成しています。フレーム部分のみのサイズは1400(縦)x 580(横)x 580(高さ)mmです。
ベース部分は4080(1400mm)を縦方向に配置し4040(500mm)を横方向に3本(内2本はシートマウント用としても利用)通すことでラダー状にしています。
高さ方向には4080(500mm)を伸ばし、間に4080(500mm)を渡し、それをベースにステアリングのマウントを構築しています。

縦方向のフレームはあと200mmほど長い方がよかったかもしれません。
1400mmだと振動ユニットを4つ平置きするスペースがありませんでした。まあ4つ平置きでなくとも問題ないと言えばないのですが。

高さ方向の500mmという長さはモニターのマウントに使うことを考えなければちょうどいい長さだと思います。
私のように高いシートポジションでなくGTやフォーミュラポジションならさらに短くすることもできるでしょう。

横方向の幅については特に不満はありません。

フレームは定番のディスクふにゃふにゃシステムによって浮かせています。
バランスディスクは定番のLa-VIEというところのものです。
フレームに直置きすると破裂の恐れがあるため、ホームセンターでカットしてもらった300 x 900 x 11mmの板を挟んでいます。
この板が左足のフットレストとしてちょうどいい位置にきているのは嬉しい誤算でした。

バランスディスクの下にはさらに防振マットを敷いています。
これはさらなる防振効果を狙ったものではなく、ペダルから足を離し踵を床に置くときの音対策です。
マットの一部をバランスディスクの下に置くことでずれないようにしています。
よってリア側のディスク下に置く必要は特にないのですが、マットが余っていたので同じようにリアディスク下にも置きました。

シートは実車につけていたバケットシートをSimlabのマウントで取り付けています。
Simlabのマウントはシートレールではないので位置の調整は少々骨が折れますが、一度決めたらそうそう変更するものでもないのでこれにしました。
それに何より安いです。

四点式ベルトも実車につけていたものです。
もちろんGがかかることはないので完全に雰囲気アイテムです。

 

・ハンコン

ハンコンベースはSimucube2 Pro、ステアリングホイールはmomo RACE 360mm(これも実車につけていたものを取りました)です。
先述した通りコクピットのコンセプトが「ツーリングカー・ラリーカー風ポジションの実現」なので360mmのステアリングはぴったりではあるのですが、たまにフォーミュラやプロトに乗るときはやっぱり大きすぎて不便です。
以前使っていたG27はステアリング径が280mmでしたが、それはどのカテゴリーでも少々の違和感で留めることのできる実に計算された数字であったことを改めて実感しています。

ステアリングのマウントは左右のフレームを繋ぐ4080フレームにハンコンの手前半分を、奥半分を同じ長さの4040フレームに載せています。
奥の4040フレームは手前の4080フレームに吊った縦方向のフレームの上に載っています。
……何かもっといい設計方法があったろう、と言わずにはいられない設計です。

 

・画面

画面はVR(Oculus Rift)の使用を前提としているため、常設のモニターはコクピットにはありません。

一応モニターアームとモニターはあるのでその気になれば設置できます。
ただVRのバーチャルデスクトップ機能で十分事足りますし、モニターが顔の前にきてしまうとOculusのセンサーから頭が隠れてしまいトラッキング精度が低下するのであまり使うことはありません。

 

・ペダル

 

G27のペダルをLeo Bodnarのケーブルで独立化させ、ブレーキにRicmotechのロードセルキットを入れています。
散々言われていることではありますが、フルブレーキでもシートが前後しないようなしっかりしたコクピットとロードセルの組み合わせはやはり素晴らしいです。
タイムへの寄与度はDDハンコンと同程度、コストパフォーマンスでは圧倒的にロードセルが勝っていると感じます。

Ricmotechのロードセルキットはストロークが少ないという特徴があるので好みは分かれるかもしれません。
私は量ではなく力でコントロールするロードセルの恩恵を存分に感じられて好きです。
また組み込み時にドリルが必要なので少しハードルは高いと思いました。

Leo Bodnarの独立化ケーブルは独立化そのものに加えて単体でキャリブレーションができるようになるのが嬉しいです。
何も踏んでいないのに3%ぐらい入力される症状が出始めていたので助かりました。

マウントはどうしても吊り下げ式がよかったのでいろいろ思案しこのような形にしました。
まずペダルユニットをSUSフレームで組んだ枠にブラケットでマウントし、その枠を傾けて位置決めをメインのフレームに立てたフレームとブラケットで行っています。
ついでに置く場所がなかったフロント側バスシェイカーも貼り付けました。

このペダルマウントもシートのマウントと同じように調整が面倒なつくりのため、その分念入りにポジションを煮詰める必要があります。
剛性に関してはフルブレーキでも微動だにせずしっかりと受け止めてくれます。

 

・シフター

 

メインのシフターはステアリング右横の自作Push-Pullシフターです。
詳しくは以前の記事をご覧ください。

シフター考:Part 2

G27ペダルの独立化ケーブルを購入した際に合わせてG27Hシフターの独立化ケーブルも購入したのですが、今は使っていません。
(Leo Bodnarのケーブルに何か問題があったからというわけではなく、単に気分の問題です)

 

・ハンドブレーキ

Heusinkveld Simhandbrakeです。
右側の高さ方向フレームに余ったブラケット等で適当につけました。
特に取付けに工夫をしていないのであまり書くことがありません。

ハンドブレーキそのものの使い心地についても、私はこれが初のハンドブレーキなので他と比べるということができません。
ただ「200ユーロ払ってこれか?」というような不満は今のところありません。
いいんじゃないでしょうか。

 

・SimVibe関連

振動ユニットはSounderlinkというところの50Wのものです。
この振動ユニット、定番とされるDayton BST-1とどういうわけか非常に似ています。
このふたつにいかなる関係があるのかはわかりませんが、問題なく使えています。
アンプはLepy LP-V3Sというものです。

Simvibeは最初に使用したとき、話に聞くほどの感動は正直ありませんでした。
しかし少し慣れた後試しに無しで走ってみたところ物足りなさがありました。
無くても別に困りませんが、特別な事情がなければ使用をやめることもないでしょう。
おすすめかどうかで言えば、余裕がある方ならやってみてもいいのでは、といった感じでしょうか。
優先度はハンコンやペダルといった入力デバイスの方が高いと思います。

全くの余談ですが、起動時に
“Matching car and track data found in simexperience database… Profile modified.”
というアナウンスの後、「ズン!」と一旦大きく震えてアイドリングの振動が始まるのがめちゃくちゃかっこよくて今でも起動の度に思わず笑みがこぼれます。
アンプの電源スイッチもトグルスイッチですし、プレイ前にはヘルメットよろしくヘッドセットも被りますし、Simucubeのドライバーではフルパワーの使用にリミッター解除の確認を求められますし、何かのパイロットになったかのような気分が味わえます。
なんならこれこそがこのコクピットを構築して一番満足したところと言ってもいいぐらいです。
ただ、これは不満点にも通じてくるのですが……。(後述)

 

・不満点

これまではいいところを記述してきましたが、当然不満点もいくらかはあります。

 

・乗り降りしづらい

シート膝裏部分の座面からハンコンマウントの下面までの距離が160mm足らずとタイトなため、ハコ車ポジションでありながらゆとりはあまりありません。
乗り込む際に脛をぶつけて悶絶したことも何度かありました。今後もあるでしょう……。

 

・VR非対応ソフトが満足にプレイできない

ほぼVR使用前提のため、VR非対応ソフトは一画面でプレイすることになります。
なにも一画面がダメというわけではないのですが、やはりそこだけ他に追いついていないというボトルネック感は拭えません。
やはり三画面の方がつぶしはきくと思います。
その分モニターやマウントやグラボのことを考える必要があり、私はそれをせずに安くあげることを選んだので仕方がないのですが。

 

・プレイが面倒になった

装備が充実したのはいいのですが、その分コースに出て走り出すまでにやることが多くなり億劫になりがちだというのは偽らざる事実です。
例えば、以前机にG27を設置していた際にはだいたい以下のような手順を踏んでいました。

G27のUSBを差す→ソフトを起動する→コースに出る

それが今では……

アンプ・Simucubeの電源を入れる → Oculus・Truedrive・Sim Commander 4を起動する → シューズを履いてコクピットに収まりベルトを締める → ヘッドセットを被りSim Commander 4からソフトを起動する → グローブをつけてコースに出る

と、とてつもなく冗長になってしまいます。

「たったそれだけじゃないか」と思われる方もいるでしょう。
しかしたったこれだけのことがいざ目の前にすると途方もなく高いハードルに見えてくることがあるのです。
あれほど欲しがっていた装備を高いお金を出して揃えたのに、いざそれをいつでも自由に使えるとなると何故だか熱意が失われてしまう……不思議なものです。
上述したように、それが楽しいところもありますが。