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RaceRoom Racing Experience

開発:Sector3(旧SimBin)

 

[良くも悪くも異色のシム。GTR2の流れを汲んでいる、まさに『R3』]

 

良いところ:他とは一線を画したユニークさ
悪いところ:ユニークすぎる

 

R3Eを始めてプレイしたときのことは忘れられない。
ティザーサイトが公開された以外全く音沙汰がなかったGTR3を待ち続け、
ようやくこれは出ないのだということを理解した私がR3Eをインストールしたのはサービスが始まってからしばらく経ってからだった。
起動後、どこをどう押せばいいのか見当もつかない複雑なインターフェースに面食らっていると、
車種選択画面でよくわからない架空車が並ぶ中にぽつんと一台サリーンS7があるのを見つけた。
GTR2で慣れ親しんだ車だ。付き合いで出席した知らない人ばかりの集まりの中で顔見知りを発見したような気分で、私はサリーンを選びこれまた架空のコースへ繰り出した。

 

そしてしばらく走った私はデスクトップに戻り、R3Eをアンインストールしたのだった。
どうしようもなくつまらなかった。褒めるべきところはなにひとつとして無かった。
待ち望んでいたGTR3の替わりがこれか……。怒りを通り越して呆れた私はR3Eを削除しながら「SimBinは終わった」と思った。
その後本当にSimBinは終わってしまうのだが。

 

SimBinが潰れてSector3と新しく名前を変えた頃だったか、R3Eが評判になっていることを耳にした私は再インストールをした。
DTM Experienceがすごいという噂を聞いてもまだ半信半疑だったが、WTCCが出たというのを聞いてどんなものかと試してみたくなったのだ。
再び始めてみて驚いた。UIは相変わらずだったが、他は劇的に変わっていたのだ。
挙動、音、FFB全てが満足できるものであり、限定的ではあるが無料で使える車、コースが増加していた。
コンペティションやアペックスハントといった新しいモードもできていた(アペックスハントは不評だったのか現在では消えてしまったが)。
しばらく走ってそれを理解した私の中でのR3Eの評価は最低から最高まで一気にジャンプアップし、
今度はアンインストールではなく、WTCCパックを購入するためコースを出たのだった。
R3Eの特徴はなんと言ってもその料金体系だろう。
今ではすっかりお馴染みとなった基本無料というものだ。
これがいいかどうかは評価が真っ二つに分かれている。事実Steamのユーザーレビューはこうしたレースシムには珍しく賛否両論となっている。
否定的な意見もレースシムにとって最も大切な挙動について言及されているものよりも、その料金体系について苦言を呈されているものが多い。
review
ちなみにSteamで販売されているgMortor2系のシムで評価が好評でないのはR3EとCopa Petrobras de Marcasしかない。
興味深いのはCopa Petrobras de Marcasも無料のタイトルであるということだ。
低評価を入れているレビューを見た限りではやはりCopa Petrobras de Marcasも挙動について文句を言っている人よりもそれ以外について書いている人が多く、酷いものになると”NO”の一言だけなどというものもある。
これが何を表すか?
あくまで低評価レビューを見ただけで勝手な想像に過ぎないが、無料のタイトルなのでシビアなレースシムだということを知らない人がとりあえずやってみて、ついていけずに低評価を入れているのだろう。
R3Eも同じような状況だと考えれば間口を広げるのには成功しているのかもしれない。

 

閑話休題。
無料の車やコース以外はDLCを買うことでアンロックされる。
つまりDLCを買ってもらわなければSector3にとっては商売にならないわけで、それをさせるためだろうか、ユーザーが自由に車やコースのMODを導入することはできない。
ならばその買わせたいDLCは一体どういうラインナップなのかというと、これはなかなかSimBinらしさにあふれたものだ。
押しも押されぬ人気カテゴリであるDTM、WTCC、FIA-GT3などはしっかり押さえてきたかと思えば、DTM’92、グループA、ヒルクライム、グループ5などかなりマニアックなカテゴリを収録していて独自性が強い。
RaceシリーズもSTCCなどユニークな車を収録してはいたが、ここにきてその傾向がより強くなっている。
一方でコースはどうかというとこちらはあまり奇抜ではない。スパやモンツァ、鈴鹿といった有名どころと車に合わせたコース、たとえばDTMのノリスリンクやWTCCのマカオといったオーソドックスなラインナップである。
リリースの報せを見たとき思わず「そう来るか……」と呟いてしまったグループ5パック。

 

今紹介したのは全て有料コンテンツであり、ここだけを見た方はR3Eを楽しむためにはDLCの購入が必須と思われるかもしれない。
しかし私が声を大にして言いたいのは、DLCを買わなければ何もできないというわけではないということだ。
私がおすすめしたいのはコンペティションモードだ。
これはあらかじめ決められた車とコースでタイムを競い合うというモードである。
これだけなら別に大したことではないかもしれないと思うかもしれないが、R3Eはそのシステム周りが非常によくできている。
まず一周走ると、その記録は即座にサーバーに送られ、そのタイムが何位かすぐにわかる。
それと同時にそのラップのゴーストと走行ラインがコース上に現れることで、ブレーキングポイントや走行ラインを詰めていくことがとてもやりやすい。
ある程度走った後は休憩を兼ねてリーダーボードを見るといい。これもまた国別、車種別、難易度別など細かくソートできて非常に使い勝手がいい。
そして何より、このコンペティションは使用する車・コースを所持していなくとも参加できるのである。
使用する車・コースの組み合わせを自由に選べないという欠点こそあるものの、逆に言えば欠点はそこだけしかない。
無課金勢も課金勢も関係なくフェアなバトルが堪能できる。

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コンペティションで一周終えたところ。それまでのベストから何秒更新したか、何位のタイムだったか、順位の近い他のプレイヤーとの差はどれくらいか、などということが瞬時に把握できる。

他にもR3Eの楽しみ方はいろいろある。
CPUドライバーの強さを自動で調整してくれるアダプティブAIを利用したシングルレースモード。
コンペティションとよく似た(というよりこれを元にコンペが発展したのだろうが)リーダーボードチャレンジというモードでは好きなコース・好きな車でタイムアタックランキングに挑戦できる。
コンペティションと違って他のプレイヤーのゴーストと直接対決することができ、中にはVIPドライバーと呼ばれる本物のプロレーシングドライバーもいる。
一方で、R3Eにもまた評価できない点はいくつかある。冒頭でこき下ろしたUIは改善されたが。
基本無料を評価点ととるかどうかは人それぞれだが、MODが導入できないのは大きな欠点と言えるだろう。
前述したようにMODが導入できないというのはこうした販売形態をとっている以上仕方ないことではあるが、MODを導入して好きなコースを好きな車で走り回りたいという人にはお勧めできない。
また無料のコンテンツはやはり無料なだけあって十分とは言えない。
車は数こそそこそこあるものの、多くが架空の車であり、コースに至っては無料で使えるのはたった3コースしかない。そのうちひとつは架空、もうひとつはヒルクライムコース、最後のひとつが実在のコースと、どうしても実在にこだわる人ならば事実上選択肢は無くなってしまう。
結局「不満ならDLCを買ってくれ」ということなのだろうが……
R3EにもSimBinお馴染みの難易度設定がある。別にそれ自体は昔からあったもので珍しくはない。
注目すべきは難易度設定のひとつ、最難度である”GET REAL”だ。
見覚えのある方もいると思う。これは元を辿ればGTR2時代のSimBinのスローガンである。RaceシリーズではGET THE GAMEというものに変わっていたのでそれ以来の復活となっている。
またそれだけではなく、R3Eには随所に昔のSimBinの匂いが感じられる。
たとえばFFB。Raceシリーズでは弱めだったそれは、R3EではGTR2のようにガツガツ来る。むしろGTR2のときよりも強くなっていて、長時間の走行では握力がかなり低下してしまうほどだ。
やや大げさな、しかしインフォメーションとしてわかりやすいFFBはGTR2の特徴のひとつとして有名であり、愛されていた要素でもあった。

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懐かしのスローガン。

だからこそ、”GET REAL”というスローガンは浮いている。
レースシムの選択肢が数えるほどしか無かったGTR2の最盛期と比べ、今はリアルを謳うタイトルは数多い。
それらと比べるとR3EのFFBは現実離れしたものに思えてくる。
いや現在のほかのタイトルを持ち出すまでも無く、当時ですらGTR2のデフォルトのFFBが実車とは違う演出がなされたものであることは知れ渡っていた。
GTR2の発売はもう10年も前であることを考えると、それは仕方ないと考えることもできる。rFactorのデフォルトFFBも正直イマイチだったし、当時の技術ではそれが精一杯なのだろう、と。
しかしR3EでSimbinは再びGTR2風味のFFBに戻したのである。Raceシリーズは軽めのFFBだったというのに。
これはSimBinの技術力が低いというわけではなく、確信を持って意図的に為されたものではないだろうか。
先ほどのコンペティションの画像を見てもらえれば分かるとおり、R3Eではコーナーの脇にコーナーマーカーが設置されている(設定でオフにできる)。
遠いところから順に緑、黄、赤、と色が変化していくそれは、R3E内の全てのサーキットに存在する。
見ての通り、リアルかそうでないかで言えば全くリアルではない。しかしこのコーナーマーカーはRaceシリーズの出てくるのが遅いコーナーマーカーよりはずっと役に立つ。
前述したFFBもそうだ。GTR2もR3EもデフォルトのFFBはかなり強く、演出が過剰だ。しかしそのおかげでタイヤの状態が文字通り手に取るようにわかる。
Sector3の目指すところは写実的な、現実をそのままシミュレートしたリアルではなく、
ドライバーがタイヤのグリップを破綻する直前のギリギリまで使ってタイムを削り取る、あるいはテールトゥノーズ、ホイールトゥホイールのバトルを展開するといった体験(Experience)のリアルさなのだろう。それはまさしくGTR2の再来と呼ぶにふさわしい。
気をつけてほしいのは、だからと言ってR3Eが全く現実離れでないというわけではないということだ。強いFFBが気に入らないのならば調節すればいいだけの話であり、事実これまで散々GTR2のFFBが懐かしいと言ってきた私も現実に近いFFBを求めてセッティングを弄っている。

 

ここまで述べてきたR3Eの特徴は全てが良くも悪くも他のタイトルにはないものばかりだ。
R3Eは異色のタイトルであると言えよう。
それは基本無料やコンペ、リーダーボードなどSector3が意図して独自性を強めようと打ち出した新要素も影響しているが、MOD導入のできないユーザーアンフレンドリーな仕様もまた一役買っている。
以前の記事で私が述べたgMortor2系特有の「別にrFactor(GTR2)のMODで十分でしょ」という反論を見事に打ち破っている。
このユニークさが受け入れられるかどうかは人によって大きく異なるだろうが、受け入れられるのならばまず間違いなくハマるだろう。
賛否両論のレビューを見て回れ右した人も、かつての私のように少しだけ触ってアンインストールした人も、SimBinから続くSector3の提唱する”リアル”を体験してみてはいかがだろうか。

※4/9 追記
4/1になされた大型アップデートでFFBはややマイルドになり、そこまで大げさではなくなった。
このFFBのアップデートはフォーラムでもおおむね高評価である。

3/31 コーナーマーカーについて追記。
4/9 FFBについて追記・誤字の修正