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GTR2 FIA GT RACING GAME
開発 Simbin

[初心者に勧めたいレースシム。……手に入れば、だが]

良いところ:初心者を卒業させてくれるスクールモード
悪いところ:やや入手しづらい

GTR2は2003年、2004年度のFIA GT選手権を再現したものであり、実際のマシンやサーキットが登場する。
しかしそういったことはあまり重要ではない。MODを導入することでコンテンツなどどうにでもなるからだ。

ここで私が唯一紹介するのは、私がGTR2を初心者に勧める最大の理由、Driving School(以下スクール)モードの存在だ。これはその名の通り、教習所のようなモードである。
グランツーリスモでいうライセンスモードと同じものと思ってもらって差し支えない。
グランツーリスモの名前を出したことからもわかるように、教習モードそれ自体は目新しいものではない。

それでもこうしてわざわざ取り上げる理由は、こうしたモードのあるレースシムはおそらくこのGTR2以外には存在しないからだ。
(もちろん私が知らないだけで他にあるかもしれないが……。RBRは厳密に言うとレースシムではないので除外)

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スクールモードはBasics(基本トレーニング)とCircuit Coaching(サーキットごとの攻略)のふたつに分けられる。
Basicsモードでは加速、減速、コーナリング、オーバーテイクといった基本動作を練習する。
各項目はそれぞれいくつかのレベルに分かれているが、全て走る場所は同じで目標タイムや条件などが異なるのみ。

例えば加速項目。加速項目はレベル1から7まであり、全てアンデルストープのフライトストレートを走る内容となっている。
レベル1ではただ単に停止状態から加速し、時間内にゴールに辿りつけばいい。
これがレベル7になると天気がウェットに変わり、タイヤはドライタイヤのままで、さらに制限時間は厳しめ、といった具合だ。
加速以外のその他の項目も基本は同じである。

Circuit Coachingではひとつのサーキットを四つのセクターに分け、それぞれに目標タイムが設定される。
最後(とはいうものの順番が決まっているわけではない)に一周をまとめて走るレッスンがふたつある。
これはふたつめのほうがややタイムが厳しい。

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「雨のマニクール。アデレードヘアピンだけで同じ性能のクルマに0.6秒差をつけろ」ってかなり無茶。

このスクールモードでの特筆すべきはドライビングラインが表示されることだ。
加速は青、パーシャルは白、減速は赤と色分けされていてどこでどう操作をするべきかがわかりやすい。

しかし、基準タイムをクリアしてゴールドギア(一段階上のクリアタイム)を目標にしたあたりから、プレイヤーはあることに気付くはずだ。

「ラインから外れてもタイムはそれほど悪くないかも……」

そう、このスクールで表示されるラインは全てが完璧なものではない。
しかしそれこそがプレイヤーにラインを試行錯誤させることに成功しているのだ。
ラインが変わればアクセルやブレーキも同じようにはいかない。
自然、プレイヤーは様々な走り方について考え、試すこととなるのだ。

さらにここで「レベルは変わっても内容は基本的に変わらない」というスクールの仕様が生きてくる。
レベル1で新しいラインに気付きゴールドを獲得したとしよう。
その次はレベル2、少し厳しくなった条件でこの新しい発見が役立つかどうかを試すことができる。
そこでもタイムをクリアできたら万々歳で、ダメだったらまた試行錯誤を繰り返すことになるというサイクルが形づくられているのである。

これこそがGTR2のスクールの真髄である。
このモードは走り方だけでなく、より速く走るために考えるということと、その方法についてもまた教えているのだ。

もちろんSimbinがこうなるように敢えて甘いラインを設定したのかはわからない。
しかしこれが狙い通りであったのなら私は惜しみない賞賛を送りたい。
真面目に設定してこうなってしまったのなら……まあ気にすまい。結果オーライだ。

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スクールをクリアしたのなら後は好きなようにするといい。
Championshipに挑むのもMODを導入するのも自由だ。
Championshipはかなりのボリュームだし、MODはrFactorと並んで豊富だ。
そもそもスクールを最初にやらなくてもいいのだ。

しかし、スクールをやらないという選択肢は無い。
せっかく挙動を忠実に再現してあるのだ。
インストールが終わって適当なコースとクルマでアウトラップにスロットル全開にしてスピンして
「挙動シビアすぎ! クソゲー」と投げ出す前に、ぜひスクールを受けてみてほしい。

ここまでの文章を読んでGTR2が欲しくなった人がいるだろうか? もしいたら嬉しい。
嬉しいついでにあなたのこれからの行動を当ててあげよう。
あなたはGTR2を購入しようとAmazonあたりの商品ページにアクセスし……そっと「戻る」ボタンを押す。
GTR2の欠点、それは現在入手が難しいことだ。

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この記事を書いている現在、AmazonでのGTR2の最安値は輸入版の新品で16000円、中古で6900円。
ここまで散々言ってきたようにGTR2はいいシムである。しかし、この値段はちょっと高い。

こうしたプレミア化が始まったのは最近のことではなく、2011年頃には既に始まっていたように思う。
それでも2012年の暮れにGTR2を含むSimbin製のシムがSteamに安価で登場したためその問題は一旦解決した。
が、それも2015年1月にSimbin倒産の煽りを受けてかSteamからSimbin製のシムが全て消え、状況は再び悪化、現在に至る。
GTR2のダウンロード版はSteam版以外に存在しなかったので、今から手に入れようとする人はプレミアのついたDVD版を入手するほかない。
ここまで散々スクールを褒めちぎってきた私だが、さすがにこのためだけに買えとはとても言えない。
スクールだけが目的なら中古でもいいかもしれないが、それでもまだ高い……。
スクール以外に価値を見出すにも、いかんせん古いゲームである。

もっともGTR2が再びSteamに戻ってくるようなことは望み薄であり、高いという意見もまだ安かった頃を知っているゆえかもしれない。
この文章を読んで「この値段でも欲しい」と思う人がいるならそれはそれで私としては嬉しいのだが……。
判断は各々に任せる。が、わざわざ買う理由をスクール以外に求めるのは難しいと思われる。

結論として、レースシムデビューを考えている人がもしいるなら、別のソフトを買ってしまったほうがいいだろう。
GTR2のスクールは確かに素晴らしいが、ここまで大枚をはたく必要があるかと言われれば、ない。
さてGTR2がダメとなれば次に浮かぶ候補はあれしかあるまい。

というわけで次はrFactorについて書きます。

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2015/3/13 追記
SteamにGTR2を含むSimbin製品が復活しました。
何が「望み薄」だよ!
軽率な記事を書いた戒めとして当時の記述をこのまま残しておくことにします。


ちなみにSteam版はこのパッケ画像を見てわかるようにフェラーリ(とポルシェ)がバニラでは登場しません。
でも登場させる方法はあるので(検索すればすぐ出てきます)
やったことない人はまたSteamから消えてしまわないうちにぜひ。